伝統と革新をもって府中と共に歩んできた人とうなぎ、日本庭園が創る憩いの場Interview / うなぎ・日本料理店「魚元」
府中の地で長い歴史を刻んできた、うなぎ・日本料理店「魚元」。江戸末期から続くこの店は、時代の変化に合わせて姿を変えながらも、伝統の味と店の心を大切に守り続けてきました。そんな魚元のオーナーである堀江元さんにお話を伺いました。
江戸から令和へ府中とともに歩み続ける老舗
魚元の創業は、江戸末期から明治初期にかけてと伝えられています。正確な年を示す資料は残っていないのですが、三味線を弾いていた「カネ」という女性と、府中で魚屋を営んでいた「元次郎」が始めた店がその原点だといいます。「魚屋の元次郎」から店名が「魚元」になったというエピソードには、当時の人々の暮らしが感じられます。
店舗はこれまでに何度か移転してきたそうです。「初代の店は旧甲州街道沿いにあり、江戸末期から昭和10年頃まで70〜80年ほど営業していました。その後、現在みずほ銀行があるけやき並木通り沿いへ移り、昭和16年から50年頃まで約35年間店を構えました。現在の場所に移ってからは、およそ25年になります。」業態も時代とともに変化してきました。かつては料亭として営業していましたが、現在はより気軽に利用できる食事処の形をとっています。「伝統を守ることは大切ですが、それだけでは続かない」という考えのもと、変えるべきところは柔軟に変えてきたそうです。


店づくりで特に大切にしているのは、誰もが利用しやすい空間であることです。常連客には高齢の人も多く、段差が多いと来店しづらいという声もありました。そこで、できる限り段差をなくし、店内の動線を広く取るなど、バリアフリーを意識した工夫を行っています。一方で、店内に残る日本庭園は、料亭時代の名残として今も大切にされています。庭を眺めながら食事を楽しむ時間も、魚元ならではの魅力の一つです!
料理の特徴は、関東風の蒸し焼きのうなぎ。焼いて、蒸して、再び焼くという手間のかかる工程によって、ふっくらとした食感が生まれ、魚元のウナギの味を引き立てます。使用するうなぎは現在、愛知県産で、産地の特性や調理法との相性を考えて選ばれています。タレを別添えにし、好みに合わせて調整できるようにしている点や、うなぎとご飯を別々に提供するスタイルも、料亭時代から受け継がれてきた工夫です。山椒も粒と粉の二種類を用意し、香りや辛さの違いを楽しむことができます!


最近では出前も始め、使い捨て容器ではなく店の器を使用し、後から回収する形を取っています。「手間はかかるけれども、それも魚元らしさの一つ」だと堀江さんはいいます。新築住宅での家族の集まりなどで、特に利用されているそうです。
今後について堀江さんは、「伝統と革新」という考えを大切にしていきたいと話しています。「長い歴史を持つ店が少なくなっている今だからこそ、時代に合わせて発展しながら、細やかなサービスを大切にし、また来たいと思ってもらえる店であり続けたい」と言います。魚元は、府中の歴史とともに歩んできた店です。これからも変化を恐れず、魚元の味と心を守りながら、次の時代へと歩み続けていきます。


- 執筆者:
- 澤井 芙柚(さわい ふゆ)
澤﨑 梨乃(さわざき りの)
立原 美音(たちはら みおん)